2・浪漫飛行へいんですかい









ひんやりと冷えた麦茶を啜りながら、私はTVをリモコンでばちんと消した。
そしてそのまま、ソファにごろりと寝転ぶ。
テーブルには、広げられたままの宿題が、すっかり不貞腐れて放って置かれたまま。
意味も無く時計の針の音に耳を澄ませながら、
静かにしていると聞こえる、外で風が葉を揺らすざわざわという音を拾う。

家には今、私しかいない。
父は仕事へ。母は仲良くなった近所の奥さんの家へ。
そして私は…ぐーたら。
私は始まった休みを、早速持て余していた。
何よりあの…学校帰りの奇人、百のことをどうにも忘れられずに居る。
けれど基本的にぐーたらな私は、特別用事が無ければ外に出ない。
なので会えないことも当然なのだが…少し、また会いたいと思っていた。
幽霊だったのかもしれない、幻だったのかもしれない…けれど、あの人は面白い。
どちらかと言えば無口なんだろうし、特別面白いことも言わなかったけど…面白い。
会いたいなぁと一人でむふふと笑って、私は立ち上がった。
そう。今日は特別に外に出る用事があるのだ。
もしかしたら会えるかもしれない。
実は宿題を終わらせてからにしようと思っていたのだが…もう宿題は飽きた。
というか、解らない。ので。
「…行こうか」

…何処にって?そりゃ勿論…庭弄りに。



庭弄りと言っても単に母に頼まれた仕事なのだが、これがなかなか力仕事だ。
まずゴキゲンに育ちまくった雑草を抜く。そしてそれをまとめる。
スコップで農夫よろしく肥料を撒く。
やたら長いホースで一面に水を撒く。
…力仕事だ。
元々母は植物が好きだったので、この家に庭がついていると知って、大喜びだった。
そして颯爽と庭弄りを始めたわけだが…。
その庭というのが、正に、ただの地面。地球の表面そのもの。
荒れ放題。雑草伸び放題。土硬くなり放題。
とにかく奔放な場所だった。
それを現在の、家庭菜園もどきに変身させた母はなかなかのツワモノだとは思う。
グッジョブだと思う。思うけれど…娘にまでその仕事をさせるのはどうかと思う。
けれども、今回は遠目でもご近所さんらしい(?)百を見れるかもしれないと思うと、
まぁまぁヤル気が出てくる。現金です、自分。
私は早速着替えをするべく、鼻歌交じりに階段を上った。
そう…庭弄りという儀式に相応しい、あの衣装に着替えるため…。




*******





当分いじっていなかったのか、庭は結構な荒れ具合だった。
強かな雑草はアホ毛よろしく飛び出して、育てたいはずの花の養分をばっちり吸い上げている。
どこから流れてきたのか知らないが、石までごろごろと転がっている。
それを見た私は、白の割烹着の袖をまくる。
空を見上げれば、真っ白な雲に、真っ青な青。
気持ちいいくらいのその二色と、
太陽の眩しい日差しに少し目を細めて、軍手をはめなおす。
よし、と気合を入れ、長靴でずしずしと庭へ入り、まずは雑草除去へ。
余談だが…今の私は、農家のオバチャンそのもの、という格好で、恐らく遠目に見たら、
本当にただのオバチャンだろう。
割烹着に、つばの長い帽子、ズボンの裾をインした長靴、手には軍手。
まさしく、これぞまさしく、農婦。私は非常に満足だ。
が、此処で漸く気付いた。

…百も遠目から見たら、ただのオバチャンだと思って素通りしてしまう?!

けれど、まぁ、いい。
とりあえず私が百を見つけて、声を掛ければいいのだ。
大体、幽霊だったのかもしれないのだ。それならそれで、また面白い。
思い直して、ぶちぶちと雑草を抜く……素直に抜ける。快感だ。
抜いた雑草を片隅にぽいと投げて、また新たな雑草に手を掛ける。
が、これは見た目からして強敵だ。茎が太い。うえに、育ちすぎている。
茎を持ったまま立ち上がり、身体を反らして引っ張る。が、抜けない。
もっと引っ張る…抜けない。
もっともっと引っ張る…そして。
「うわっ」
ぶちっという鈍い音がした後、急に視界がひっくり返る。
「いったぁ…」
思い切り尻餅をついてしまい…下が土で柔らかかったからいいものの、矢張り痛い。
抜けた雑草は片手にしっかりと握られており、無意識にそれを睨む。
お前があんまりゴキゲンに育つから、こっちは尻餅ついたじゃないか。
乙女の桃尻に傷がついたらどうしてくれる。
それでも何とか息を吐いて立ち上がろうとすると…
…先程まで気配も感じなかったというのに、徐に目の前が陰った。
気配も無く母が帰ってきたのかと思い見上げると…

「イ●リンの真似でもしてるのか?」

とんでも御座いません。タダ単に雑草とデッドヒートして、見事こいつと刺し違えてた所です。
決してM字開脚して誘ってたわけじゃありません。
…じゃなくて。

「…あ、百さん!!」

自分でも、表情が明るくなったのが解った。
まさかこんな簡単にカモが引っかかるなんてね!!雑草と戦っただけあった。
目の前には、そう。先日の…能のお面と天狗のお面をつけた、変な格好の奇人。百。
やっぱりいつもこの格好らしい。やっぱり彼は奇人なんだ。そして、幽霊でも幻でもなかった。
ちゃんと此処に居る。
大体幽霊か幻が、イン●ンなどという単語を吐くはずがない……だろう、多分。
そんな私の失礼な思考など知るはずも無い百は、お面越しに笑ったようだった。
何だかお面越しでも、酷く大人びた笑い方だ。
「この前は悪かった。突然思い出してな」
何を、とは聞かなかった。
今はそれよりもまた会えたことが嬉しくて。
「いいえ。また会えて嬉しいです。ずっと気になってたんですよ」
「そうか。ところで竜胆は、何をしている」
見て解りませんか。雑草抜きです。とは言わず。百の差し出した手につかまり、私も立ち上がる。
「ええと…母が育ててる庭の、雑草抜きです…」
さすがに少し恥ずかしくなってぼそぼそと告げると、彼もそうかと頷いた。
「酷いんですよ。本人はご近所の奥さんとお茶してるのに、私に仕事押し付けて」
苦笑しながら私が言えば、
「竜胆という名前が付けられただけはあるな。お前は植物と相性がいい」
という返答。
「んー…?そう、なんでしょうかね…まぁ、好きですけど」
何となく会話がかみ合っていないんじゃないかとも思うが、きっとこれでいいのだろう。
百はきっと、こういう人なんだ。
「はぁ…今日も日差しが強いですね。そうだ。百さん、今時間大丈夫ですか?」
私がここぞとばかりに尋ねると、彼は相変わらずゆっくりと頷く。
よしきた!と内心ガッツポーズを決め
「じゃあ、少し木陰で話しませんか?ちょっと暑くて」
ぱたぱたと手で顔を仰いでいる私を見て、彼はまた一つ無言で頷き、近くの木陰に腰掛けた。
私も彼と少し間を置いて座ると、矢張り日陰はだいぶ涼しく、無意識に息を吐く。
ほんのちょっとしか経っていないのに、暑さで割烹着の中が蒸れているようだ。
しかし彼の顔(といってもお面だが…)にも、その態度にも、全く暑さというものが感じられない。
そこでふと私は疑問が湧き上がり、それを口にしていた。
「百さんは…いつもそのお面してらっしゃるんですか?」
「そういうわけじゃない」
と言えば何の躊躇もなく、お面をずらす。
そして現れたものを見て、私は大層驚いた。

…綺麗、だったのだ。大層。綺麗だなんて、男の人にはあまり使わないのかもしれないが。
それでも矢張り、彼の顔は綺麗と形容するのが、一番相応しかった。
目はやや狐のように吊り上がり、
その黒目には全く光というものが差し込んでいない、濡れたような黒い瞳。
それに、通った鼻筋、肉薄の唇、綺麗に整った輪郭。
ぱっつんにしてある真っ黒な髪、透き通るようなキメの細かい白い肌…。
全てが計算されたように美しかった。

(やっぱ馬鹿か天才って、見た目だけはずば抜けてるのね…)

矢張り相当失礼なことを思いながら、まじまじと見つめてしまう。目の保養だ。
「…?どうした」
「…百さん、凄く綺麗。どうしていつもお面で隠してるんですか?勿体無い」
人類の目の保養の為に、とは言わないものの、本当にそう思う。
私なんて可も不可もなく…という…
…まぁ特別綺麗というわけではない顔しか持っていないので余計に。
「…そんなことを言われたのは初めてだ。
大体、あまりこうしてヒトと話すことがないしな」
??ヒト嫌いなのだろうか。そして一体何をして生活を立てているのだろうか。
人に会わない、ということは…「お祭りの人」説は見事に崩れることになる。
ということは…

「あ。解った!!百さん、ロクロ回してるんでしょう?!」

これしかない。ああ自分。なんて冴えてるんだろう。
こんな山奥、変な格好をして、こんな所をうろうろしてるんなら、
ロクロ回してる人以外に居ないだろう。

…ざわざわ。
風が吹いた一瞬の後、百の無表情な顔が私を見る。
そして、何気なくふっと口元を緩め…どうしよっかなぁ〜と、
いかにも考えてる瞳で、じっと見つめる。
そしてやや暫く経って、その綺麗な唇は…

「…お前は、何を見て育ってきた」

ごーん。ち、違いますか師匠。
じゃあ一体何をして生活してんだろ…。ロクロじゃないんだ…。
けれど直接聞いてしまうのも何だか失礼なような気がするし…と、
私がまた考え込んでいると、助け舟を出すように
「まぁ、言ってしまえば地主だな。そういうことを聞きたかったんだろう?」
はぁ、仰るとおりで。
「そう、なんですか…地主さん…」
と、そこでまた、疑問が沸く。
彼はどう見ても、20代前半か、10代のかなり後半、といった風なのだ。
それなのに地主…ということは、細かく言えば、地主の倅。ということになる。
そうか、地主の倅か。
なるほど。じゃあ私が来たことを知っててもおかしくはない。けれど…
「家の近所に地主さんが住んでるなんて、知りませんでした。
知ってればご挨拶にも行ったんですが…今度一度行かせて下さい」
やっぱホラ、地主というか、その土地を治めてる人のところには、挨拶周りしなきゃね。
…というのは言い訳で、百に会いたいとき、そこに行けば会えるようになるからだ。
「ふむ…住んでいるといえば住んでいるが…まぁ、いい。今から案内してやろう」
マジっすか先生?!とばかり驚き、立ち上がった百につられて立ち上がる。
「いいんですか?!じゃ、じゃあ私、ちょっと着替えてきますね、この格好じゃ流石に…」
そうだ。私は庭弄りの為の農婦姿のままなのだ。
急いで家に戻ろうとすると、彼の静かな声が私を呼び止めた。
「いや、そのままの方がいい」
どういうことだろうと首を傾げると、徐に百は家の庭から続く、
森の中をざくざくと歩き始めるではないか。
確かに其処を行くなら、この格好の方が良さそうだ。
私も漸く納得して、彼の後を追った。
こんな深い森の奥に、民家などあるのだろうかと、
私にしてはまともなことを考えながら…。







*******







どのくらい歩いただろうか。
百の足は躊躇うことなく奥へと突き進んでいくが、
私は彼の影に隠れるようにしながら、少し怯えていた。
森は歩くほどに深くなり…暗くなり、今歩いている場所も、
恐らく獣ですらあまり歩かない場所なのだろう、

まるで生き物の反応が感じられない。

背の高い木々が日光を遮り、延々と同じ場所を廻っているような錯覚を起こす。
安易に連れて行ってくれるとは言ったものの…このまま此処で何かされたらどうしよう。
と、私は一番最初に感じるべきことを、今になってやっと感じていた。
百の不思議な言動も、不思議な格好も、急に恐ろしく思えてきた。
相手は男、力では叶わない。それでもし此処で急に殺されそうになったら…

と其処まで考えて、私は少し本気で寒気を感じた。
その間にも、彼はどんどん進んでいく。
しかし…

「百さん…あのー…まだ着かないんですか…?私、そろそろ…」
帰りたいんですが。と呟けば、彼は振り返らないままに
「竜胆、お前のその話し方はやめろ。面白くない」
お、面白くないぃ?!そりゃウケ狙ってるわけじゃないないからね!!
と、先程の寒気も忘れて突っ込みを入れたくなってしまうが、何とか抑えて…。

「そうだ。今お前が今思った、それだ。そういう風に話せ」

????
思った??
この人は突然何を…


「この人は突然何を…と、今思っただろう?そういう風に話せと、言っているのだ」



……

………

……もしかして………


「そうだ、その『もしかして』だ。俺には隠し事が出来ぬなぁ」

なんて言って本人はけらけら笑ってる、けど!!


読心術なんて人間業じゃないだろーに!!


「それって…つまり、会ったときからずっと…?!ていうか、何で…?!!」
混乱の極みに達した私が、その場で頭を抱えていると、
漸く振り返った百が、からかうような目つきで私を見下ろす。
「何故この力があると問われてもな。俺はずっとそうだ。お前には出来ないがな」
そりゃそうだよ!!と敬語も忘れ思わず突っ込む。
ああ私って、こんなに変なうえに凄い人と知り合いだったんだ…面白いから、いいけど。
もう。いいや。どうせやめろと言っているのは敬語のことなんだろう。
ああいいよ。やめてやる。もう金輪際やめてやる!!
何てたって心を読まれてるのに、変に気を使っても、疲れるだけだからね!!
寧ろ今までの私の気遣いと敬語を、返せ!!
と。完全に開き直った私の、この瞬間の心すらわかるのだろう。
彼は益々にやにやと笑みを深くする。
「その通りだ。お前は本当に面白いヒトだ」
「ひゃっ…百に言われたくない。それに、何だって今まで教えてくんなかったの!!」
ムキになって言い返す私が面白いのか、百はくくっと喉で笑った。
こうして敬語から急に砕けた口調に変わると、一気に親しくなったような気がするのは、
私だけだろうか。一気に彼との距離も縮まったような気さえしてくる。
まだ会ってから二日目だというのに、不思議である。まるでずっと傍に居たような…。
いや、それは考えすぎだが。
「いや、何。たまには俺も人と話してみたくなってな。
正体を教えてしまっては、面白くないだろう?
それにお前とて、多少は偽っていたわけではないか」
『多少の偽り』というのは、恐らくキャラの問題なのだろう。
使い慣れない敬語で、滅茶苦茶気遣ってたのに!!
それに、百の正体なんて未だに掴みきれて居ないし。
「正体?何のことよソレ。あんた地主の倅なんでしょ?!」
そう言うと彼は一瞬だけ静かに私を見下ろして、また直ぐにくるりと踵を返した。
「な、ちょっと、待って!」
それを追いかけながら、私は相変わらず暗い周囲を見渡した。
何だか…虫の鳴き声すら聞こえない、ような気が…。
変な力は持ってるし、意味不明な発言ばかり連発するし…やっぱりちょっと、百は…
「安心しろ、ヒトを食らう趣味はない。
それはもっと、俺達の中でも禍々しい奴らだけだ」
やっぱり、読まれていたようだ。
それにしても、相変わらず発言が意味不明だ。
もう此処まで来ると突っ込む気力も起きない。
「…本当に?今此処でワイヤーアクションとかやったりしない?」
大げさに3メートルくら吹っ飛ばされて腐乱死体になって発見、とか。
そういうの嫌だなぁと呟けば、お前は映画の見すぎだ。と素早く突っ込まれる。
「大体俺はこの山を護っているのだ。
ヒトの死体など置いて山を汚すようなことは決してするまいて」
「ふーん…じゃあいいんだけど。それより、まだ着かないの?」
疲れてきたんだけど…と、何気なく時計を見れば、かれこれ一時間以上は歩いている。
「致し方ない。お前は特別だ」
こりゃ疲れるはずだわ。
と一人でぶつぶつ言っていた私は、百の呟きなど聞いていなかった。
そして、急に視界が反転して、漸く現状に気付く。

「うわぁっ、と、ちょっと、何してんの?!」
彼の腕が割烹着姿の私を軽々と持ち上げている。所謂、お姫様だっこという、アレ。
「オヒメサマダッコ、だろう?」
余裕綽々、という風に腕の中の哀れな農婦を見下ろして、彼がにやりと笑みを作る。
「いや、そういうことじゃなくって、何で!!」
…自慢じゃないが、私はこういう風にされたことなんてない。
寧ろ男の人とこんなに急接近したことすら、ない。
…何だかとっつきにくいだの怖いだの変だのといわれて、
私にはあまり男の人が寄り付かないのだ。
人並みに、月並みな恋愛もしたいんだけどね。
こればっかりはしょうがないと、諦めているのが現状である。
今まで百に対して近づいていても何も感じなかったのは…彼が酷く大人びているように、
また性別というものを感じさせない人物と、感じていたからかもしれない。
近所のおじさん(失礼だけど…)程度、というか。

…と、そんなことはいいとして
「な、何か恥ずかしいから降ろして…」
よりによって割烹着姿のお姫様なんて…。と、一人でぐるぐるしていると、
彼がまた、ふっと笑う。
馬鹿にしたような笑い方だが、彼はこれが妙に似合っている。
「この程度で驚いてもらっては困るぞ…お前だけは特別だ。有難く思え」
一体何のことでしょうか。ああもしかしてこのままその場所へ連れてって貰えるとか…。
私の心を読んだのだろう、彼はふふん、とまた笑った後、私を抱えなおし…そして。

多分、彼は軽く地面を蹴っただけだ。

それなのに…

それなのに…!!

それなのに…!!!!



地上が…どんどん遠くなっている…?!



「うっ…ぁ…ひゃ、ひゃく!!ひゃくさん!!ひゃくさま!!!」

ひゃくどのぉぉぉ!!!!と絶叫してる辺りで、彼は心底嬉しそうに笑った。
その内いよいよおかしくなったのか、げらげらと一人暢気に大爆笑してやがる。
私は既に意味を成さない単語をぎゃーぎゃー喚きつつ、無意識に彼の首に腕を回して、
この衝撃に耐えていた。
ああ、もしかして全ては夢なんだろうか…
…だってさっきまで森の中でぐーたら歩いて…
…家じゃ宿題もやらずに水戸黄門見てて…雑草抜いて…。

で何で急に此処で空飛ぶんだろ…ああ私が疲れたって言ったからか…。
でもそういう問題じゃない気もするなぁ…。

とにもかくにも。そう。全てはこの奇人、百の所為だ。
「どうだ、絶景だろう?」
元凶たる本人は至って暢気に快適な空の旅をお楽しみのようだ。
「ひぃ!!!百!!あん、あんた、あ、絶景て、これは、一大事」
既に意味が解らない。多分百は私の心を読んで、実に楽しいのだろう。
「お前は本当に面白いな」
「わ、わたしはぜんぜ、たのしくない!!!!」
言葉すらうまく出てこない。だって、足が…足が宙に浮いて、しかも…割烹着のまま!!

(遠くから見たら絶対割烹着のオバチャンが若い子をたぶらかして
ゴキゲンに空中散歩してるよにしか見えないって!!!)

思考も既に意味がわからない。
そしてそのまま急降下し始めた身体に、私はあらん限りの声で絶叫した…。
こんなにとんでもない奴なら、あの時道を教えてやらなきゃよかった!!!!
しかし、後悔しても時既に遅く…姉さん、私は今、地面と急接近中です。









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